光がやわらかくなると、雪解けの春。そこからはじまる野沢の一年の暮らしの中で伝わってきた味を紹介します。
季節の山の色、空の色と共にある個性豊かなおかずたち。どれも四季折々の山の幸をたっぷり使った素朴な健康食です。作り方はいたってシンプルですので、ご家庭のお夕食のおかずのヒントにもなさってください。
「奥信濃野沢のはなし」シリーズその9、「村のおかず」という本には、野沢の暮らしの中に息づく素朴な郷土料理がイラストと共にたくさん紹介されています。このページに掲載したおかずの多くは、この本からの情報を再構成したものです。取材を重ね、絵と文ですばらしい一冊を生み出してくださった宮沢千賀さんと、昔ながらの味を伝えている村のおばあちゃんたちはじめ、この本の制作に協力してくださった皆さんに、今一度心からのお礼を申し上げます。
住吉屋では、「取り回し鉢」として、毎晩これらの滋味をお食事の一部としてお出ししています。お越しの節には心ゆくまでお楽しみください。
2011/11/29

いもなます
古くから伝わる料理。野沢では祝儀、不祝儀、酒の席やお茶請けに、季節を問わず供される、ふるさとの味です。じゃがいもを、よく水にさらすことと、酢を入れるタイミングが、シャリッとする歯ごたえのコツのようです。昔は酢と塩だけで食べていたと聞きました。
<材料>
じゃがいも
サラダオイル
砂糖
塩
<作り方>
じゃがいもを千切りにする。切りながら水に入れ、一時間以上さらす。
さらしたら水切りをして、
サラダオイルをあたためて強火で炒める。
半生程度炒めたところへ味付けをする。砂糖は普通の煮物の二倍が検討。酢は早めに入れると歯ざわりがよくなる。
よくさましてすすめる。

塩煮芋
いもなますと同様、野沢ではよく作られる料理です。小芋を皮のまま調理します。お茶のみに寄り合うと「仲間うちではいつも、ばいっつりもん(奪い合う程のもの)になる」人気のある煮物です。昔は始めから少々の油と、かぶるくらいの塩水で煮たので、この名がついたそうですが、今は油と醤油に砂糖も用いています
<材料>
じゃがいも 1kg/醤油 100cc/砂糖 200g/サラダ油
(調味料は好みで)
<作り方>
鍋にサラダ油を熱し小芋を炒める。
半量の醤油と砂糖を入れる。
ヒタヒタの水を加え、はじめは強火でやわらかくなるまで煮る。
残りの醤油と砂糖を又分けて加え、とろ火で水分がなくなるまで煮て仕上げる。
2011/11/30

ふきのとう
<ふきみそ>
ふきのとうを細かく刻み、好みの砂糖と味噌を混ぜて浅い皿に平らに練りつけて、表面をこんがりと焼きます。ふきのとうの香りと苦味が味噌に良く合い、春一番の味です。
<ふきのとう和え物3種>
さっと茹でこぼしてから食べやすく切ります。三杯酢、ごまみそ、くるみあえのどれもよく合います。

春蘭
<春蘭の花>
花の部分を塩漬けか、梅酢漬けにします。 吸い物に浮かべたり熱湯に浮かべてお茶としていただきます。
ゆきのした
<ゆきのしたの天ぷら>
説明するまでもなさそうですね。丸い葉っぱをカラリと天ぷらに。
かたくり と あまなしょうぶ
<かたくりのおひたし>
花も葉も茹でて、わさび醤油などでいただきます。舌触りがよく、独特な甘みがあります。
<あまなしょうぶのあえもの、おひたし>
10センチ位にのびた草の根の白い部分が、おひたしや酢味噌和えに向いています。
2011/12/04
とうたち菜
<とうたち菜のおひたし>
雪が消えて、秋に取り残した野沢菜の芽が伸びてきます。これをとうたち菜と呼んで、おひたしにします。
味噌汁の実にもピッタリです。
春菜
<春菜の浅漬け>
雪解けすぐの畑に野沢菜の種をまいて出て来るお菜を「春菜・うぐいす菜」といいます。20センチ位のものを塩でもみ、浅漬けにします。
<春菜と薄揚げの煮物>
茹でたお菜と千切りの薄揚げを醤油で味付けして煮ます。鶏肉との組み合わせもおすすめです。
2011/12/04
●大根
大根は秋から冬にかけてのおかずに欠かせません。野沢では、冬の保存用として、昔から干し大根と凍み大根が作られてきました。水分を抜き、冬の寒さにさらすことでうまみが凝縮され、滋味のある煮物ができます。翌年の入梅前まで村の食卓を支えてくれる、たのもしい野菜です。
大根みそ煮
水から煮た大根がやわらかくなってからみそで味付ける素朴な煮物です。
大根あら煮
生ものが手に入らない昔には、塩鮭などの頭を焼いて、熱湯で流してから適当な大きさに切った大根といっしょにコトコトと骨まで食べられるように煮たそうです。今でも通用するおいしいおかずですし、あらのかわりに鮭缶を使うのも手軽でいいですね。
大根からし和え
大根をいちょう切りにしてふかし、からし醤油やからし味噌で食べます。お斎(とき)の終わりに、毒消しにといってつけた料理だそうです。
大根葉の油煮
葉を麻釜でゆでてから油で炒め、醤油で味付けます。
●かぶ
野沢菜は、もともと葉ではなく蕪を食べる野菜だったので、根元に蕪がついています。生のものは冬のはじめにしか味わえません。
かぶの三杯酢
新鮮なものをうす切りにして三杯酢につけます。サラダ感覚で。
かぶの漬物
ぬか漬、粕漬、味噌漬など、かぶはいろいろな種類の漬物に向きます。味噌漬にする場合は、一度塩で漬けてから味噌につけると味がよいようです。
干しかぶの煮物
蕪をたて半分か、包丁の厚さにペタペタ切り、糸を通してつるし、寒ざらしにして干しかぶを作っています。煮物のお相手としては、いろいろなきのことインゲン豆、身欠きニシンとたけのこなど。
●いもぼくさ(いもがら)
秋に里芋を収穫してから残った茎を麻釜でゆで、皮をむいてカラカラになるまで日に干すと、木の皮のようになります。今は昔ほどには使われていませんが、冬場に味噌汁や煮物に入れています。使うときは、まず長いので適当に切り、熱めのお湯の中でゆっくりともみ、そのまましばらく浸しておいてもどします。日向そのものを味わうような素朴な味です。
いもぼくさの味噌汁
味噌汁には、じゃがいもとの組み合わせが美味です。
いもぼくさの旨煮
いもぼくさのお相手に、ちくわか身欠きニシンを入れて旨煮にします。
●ごぼう
村では、ごぼうは、砂地でつくられている飯山市小沼産のものが最高だということになっています。太くてやわらかく、全国に出回っているものとは一味違います。
からしごぼう
ごぼうの収穫は初雪も近いころです。米のとぎ汁で柔らかくなるまで煮てアクを取り、だし、醤油、砂糖で薄味に煮て、からしであえます。
すごんぼ
鍋に入る長さに切ったごぼうを蒸します。すりこぎで繊維をつぶし、三杯酢に一晩ほど漬け込みます。4センチ程度の長さに切って盛り付け、ゴマを振りかけます。法事や祝いの膳に欠かせない料理です。
2011/12/12

野沢の村では、温泉のお湯で菜っ葉を洗って漬けています。昔ながらの方法では、塩だけで漬けるのですが、今は味噌、醤油、酒、煮干、唐辛子などを入れる家が増えてきました。
味噌汁より薄めに味噌を溶いた水か、バケツいっぱいぐらいの水を桶の底に入れ、お菜を漬け込み、水が早く上がるように工夫します。塩、味噌、醤油、唐辛子の調味料なら、春まで痛みが来ません。
春の雪が消えるまで、毎日のようにおかずに、お茶請けに、そしていろいろ料理されて食卓に上ります。
野沢菜の粕汁
初雪汁と呼ばれることもあります。基本的に作り方はお味噌汁と同じです。塩抜きしてきざんだお菜の葉の部分をだし汁に入れ、10分ほど煮ます。油揚げの刻んだのを入れ、味噌と酒粕を加え、またしばらく煮ます。最後にさいの目に切った豆腐を入れてできあがり。味噌と酒粕の割合の基本は1対1。酒粕を増やすと田舎っぽい素朴さが出ます。
野沢菜と大豆の煮物
野沢菜漬の塩味で大豆を煮ふくめる、素朴なおかずです。さっと水洗いしたお菜を刻んで、ごま油で軽く炒めます。そこへ、あらかじめ柔らかく水煮した大豆と油揚げを加え、酒少々を加え、ごく小さい火加減で30分ほど煮ます。水分が足りなくなったら、こげないように水を補ってください。しょうゆと砂糖で味をととのえて、もう少々火を入れればできあがり。野沢菜は冬の後半の少々酸っぱくなったくらいのものを使うと、味わい深くなります。
野沢菜とさつまいもの煮物
これも、野沢菜漬の塩味を利用した煮物です。さっと水洗いしたお菜と油揚げを刻んで、ごま油でゆっくり炒め煮をします。お菜がやわらかくなったら、5ミリほどの厚さの半月に切ったさつまいもを入れ、酒、砂糖、醤油で味をととのえ、芋がやわらかくなるまでじっくり煮ます。作ってから半日ほどおいて味をなじませ、食卓に出すとき再加熱したほうが美味しいようです。
野沢菜ごはん
塩抜きした野沢菜を刻み、油でサッと炒めてごはんにまぶします。昔は漬けたものをみじん切りしてごはんの煮上がりにのせてふかしたようです。
野沢菜とうす揚げ炒め
塩抜きしたお菜と千切りのうす揚げを炒め、軽く醤油と酒で味付けます。他にサバ缶、ちくわ等とも相性がよいようです。
野沢菜つくだ煮
漬菜を2cmに切ります。一晩水に漬けて塩ぬきしてから重曹を少々入れて水煮をします。やわらかくなるまで煮てから、砂糖、醤油で味付けして、汁がなくなるまでとろ火で。
野沢菜納豆
漬菜を(量の多少は好みで)細かく刻んでしっかりしぼり、納豆に加えてよく混ぜるだけですが、おいしいものです。
野沢菜おもちソテー
もちを縦ふたつに切ります。お菜の葉の部分にもちをのせ、しその実の塩漬(塩出しして絞る)をひとつまみ、一緒に包みます。フライパンにサラダ油をひき、強火で焦がさぬよう、ふたをして焼きます。焼けたところへ醤油を1、2滴たらします。もちの代わりに小さなおにぎりでも。お酒の後にも、軽食にも好評です。
野沢菜納豆スパゲティー
麺を茹でてから、熱いうちにバターをからめます。皿に盛り付けたら、野沢菜納豆を上からかけます。中心にくぼみをつけて、ウズラの卵黄を落とします。
中華風野沢菜炒め
<材料>
どんぶり一杯の塩抜きしたお菜/うす切り牛肉 100~150g/ニンニク 2かけ/赤唐辛子 3本/酒 大さじ1/醤油/ごま油
<作り方>
ごま油でニンニク(つぶしたもの)と唐辛子を炒め、色がついたら取り出す。
表面が白くなるまで牛肉を炒め、お菜を加え、肉によく火を通す。
酒を入れ、まわったら醤油を加え、カラッとなるまで炒める。
2011/12/12