
「奥信濃野沢のはなし」は、六代目主人河野正人が野沢温泉と住吉屋にまつわる楽しい本を、と作りはじめたシリーズです。足かけ二十年という年月を経て、第一期十二巻が完成したのが平成二年の春でした。 住吉屋という、荒波にもまれる木の葉舟のような小さな宿。その宿が、百三十年という歴史を重ね、こうして、ひとつひとつささやかな夢を実現できていることに、たくさんの方々の暖かい心を感じます。変わらぬご支援をくださった全てのみなさんに、改めてお礼申し上げます。 どの一冊も、それぞれにいい本になっていると思います。楽しんでいただければ幸いです。
住吉屋
2011/11/28
麻釜を開いた住吉屋の初代、河野安信は、郷土玩具として名高い「はと車」をはじめて作った人でもあります。はと車と住吉屋の縁は深いのです。
はと爺と呼ばれ、はと車の宗家を名乗った河野平作さんから昭和40年代に伺った話をもとに、安信の祖父の家を豊かにした旅の僧侶と鳩の話、産業文化博覧会へ出品する前に善光寺へ鳩の雌雄を見分けに通ったときのことなど、はと車の歴史をたどります。麻釜でゆでたあけびの蔓だけを材料に、コツコツと良心的に編み上げる玩具にふさわしく、しみじみした一冊になりました。
2011/11/29
その昔、北信濃の冬の農閑期では、一日中こたつにあたってお茶を飲んでおしゃべりをするのが唯一の娯楽でした。お茶うけは、もちろん野沢菜漬け。どこの家でも「うちのお葉漬け」の味を自慢にしています。今でこそ都会のスーパーでも普通に売られていますが、本場の味は、また格別です。野沢菜はどこから来たのか、どのようにして今の味になっていったのか、漬け方のコツなど、風物詩をたっぷりと交えながら語る一冊です。(昭和47年刊)
2011/11/30
「ののつきばな」から「ねまがりだけ」「くるみ」まで、草木にまつわる古くからの知恵や逸話などを集めた本です。主に「はと車」の河野平作さんと、村内で長年無報酬のそろばん算数塾を開いていた河野満治郎さんからの丁寧な聞き書きによって、野沢の風物や方言が生き生きと暖かく紹介されています。宇都宮貞子著、原山尚久イラスト。(昭和49年刊))
2011/11/30
昭和五年、流行に遅れじと突然スキーをしてみることを決意した田河先生と、住吉屋の出会い。そこからはじまる長年の楽しい交流の思い出話が、おなじみ「のらくろ」漫画のイラストを交えてユーモアたっぷりに紹介されます。半世紀以上前の野沢のスキー場や宿の雰囲気が手にとるようにわかります。住吉屋五代の似顔絵もあります。田河水泡著。(昭和50年刊)
2011/11/30
一月十五日は道祖神祭り。野沢にとって特別の日です。この日が近づくと「どうもそわそわして、仕事も手につかなくなります」と告白している著者、栗田哲夫さんの楽しく詳しい祭りの報告。眼前に村の人々の顔と暮らしが浮かぶような描写が迫力ある版画と相まって、二つとない本になりました。祭り前後の風俗習慣の記録としても秀逸です。栗田哲夫著、原山尚久画。(昭和52年刊)
2011/11/30
野沢のおばあちゃんたちに語ってもらい、録音テープから翻字した昔話集です。昔語りは「お年寄りを一家の中心として大切にする心温かい家庭がなければ生まれません」という浅川先生の言葉が胸に染みる二巻になりました。きっと何度でも読みたい、子供にも読んで聞かせたいと思っていただけると思います。類似の話の世界的な分布や、古書への登場などを紹介する先生の解説も収録しています。浅川欽一著。(昭和53年、54年刊)
2011/11/30
たかだか数十年が過ぎただけであるのに、大昔のようなことがする時代。大正13年に、初めて村にスキー客がやってきたころからの思い出ばなしを集めた本です。野沢のスキー場と売店のはじまり、トタン板でスキーを修理したおじいちゃんのこと、冬の村の暮らし、忘れられない人たちの遠い思い出が語られています。今はすっかり近代化された野沢のスキー場にも、こんな時代があったのです。(昭和59年刊)
2011/11/30
雪解けの春からはじまる野沢の一年を追った、村の暮らしの味の本です。材料の処理のし方や、おかずの作り方もたっぷり紹介されています。もちろん、その中には、「いもなます」をはじめとした住吉屋でおだししている「取り回し鉢」に登場するおかずも出ています。全編美しいイラストに彩られた、ファンの多い一冊です。宮沢千賀画、文。(昭和60年刊)
2011/11/30
「永楽屋の先生」として知られていた河野文夫先生は、村の「哲学」のような人でした。遠く九州に生まれた先生が、終の棲家と決めた野沢の姿を澄んだ目で見つめた、画と文での記録です。満開の桜花、雪景色、石仏、たけのこ、働く村人などが収められています。自由闊達かつ味わい深いその画風からは、私たちが日ごろ忘れがちな姿勢が伝わってきます。河野文夫画、文。(昭和60年刊)
2011/11/30
野沢の周囲の豊かな自然の中を歩く楽しさを、より多くの人に紹介したいという願いから生まれた一冊です。植物研究家の丸山利雄先生と、地方史専攻の小林英一先生に文章をお願いしたので、ブナ林の四季をたどり、村内の銘木や巨木を案内する細やかな自然ガイドだけでなく、2500万年前には千曲川の流域が海底であったことや、小菅山が修験道の霊場だったことにも触れる、ダイナミックな内容になりました。イラストは宮沢千賀さん。丸山利雄、小林英一著。(昭和63年刊)
2011/11/30
明治2年から昭和の終わりまでの住吉屋と野沢の村の歴史をたどる本です。明治時代の信越線開通。スキー場ができた大正時代。昭和に入ってさらに栄えた村に戦時下、学童疎開がやってきたこと。写真資料も豊富に入れ、住吉屋の視点から日本の近現代を俯瞰する感じになりました。足掛け20年かかって一区切りついたシリーズ第1期12冊の完結にふさわしい内容と思います。小林英一著。(平成2年刊)
2011/11/30